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花みち元気塾通信 2021年8月号「その瞬間、自分自身を生きる」

この時期になると思い出すことがあります。
父は魚釣りが好きで、色々試すうち、クルーザーを買ってトローリングという方法を楽しむようになりました。

船に乗ると波で大きく揺れて、私は帰ってきてからも目の前に波が見え、ずっと自分が揺れているようでした。
 
次第に船が大きくなり、大洗近くの涸沼というところに土地を買って、チェーンで船を引き上げ、涸沼に下ろしてその後太平洋に出ていくという方式を考えて実践しました。

先日思い立って一人でその場所に行ってみました。場所はよくわからなかったのですが、小さな波の「ポチャ」という音は昔のままでした。

その頃まだ幼かった私は、父と兄が真っ黒になってチェーンを引く姿が印象に残っています。
楽しいというより、必死という言葉の方が合っていた気がします。が、そこには表も裏もなく「夢中で生きている」ただその状況だけでした。

ある時夕立で雷が鳴り出し、船置き場の建物の中にある、鉄の船を置くところに座って雨やどりしていたのですが、突然ピカッという光とともに、座っていた鉄にビビビっときて、全員がその衝撃で飛び跳ねました。
雷が落ちたのでした。普段は穏やかな姿の光景が恐ろしさに変化する瞬間でした。

この経験は言葉では言えないような、私の中の何が安全でどこまでいったら危ないかといった感覚の線引きとなっているように思います。
 
今、世界はコロナ禍が続きます。
そして、この文章を書いている今、日本は豪雨で危険に際しています。洪水、土砂崩れ、地震、噴火・・・突然あらゆることが襲ってきます。
ウイルスや自然の脅威の元でどう生きていけば良いのか、誰にも答えが出ない世の中です。

誰かを責めたり非難したりしても解決しない、自分自身の安全の中でできることをすることが最善と感じます。

こうした中で子ども達に学ぶことは多くあります。
絵がとても上達し、パソコンを扱う力は負けそうになります。
私がほんの少し、実験をしただけで、こんなにも喜んでくれる子ども達の姿に私の方が元気になります。

授業の後、公園に出ると笑顔で思い切り走り抜きます。
「楽しい、楽しい」と言って周囲に集まってくれます。
が、誰一人マスクを外す子はいません。
すぐにアルコールで消毒します。

オンラインに切り替えても、「オンラインも好き」と言って熱心に取り組みます。

こうした姿には、かつて私が父や兄がチェーンを引く姿に嘘偽りがなかったと同じように、「その瞬間を夢中で生き抜く」それを感じます。
父も兄も早くに亡くなってしまいましたが、その瞬間「生きていた」ことは事実です。

今の状況を嘆くだけではなく、今後何が起きるかわからない、でもこの瞬間を思いっきり生き抜く、そこに間違いはないように思います。
 
戦うのではなく、「自分自身を生きる」。
いつ何が起きても悔いのないよう。
そんな風な思いで私は毎日を過ごすようになってきました。