毎回の授業での作文や、作文講習、読書感想文講習、などで指導していると、毎回「もったいないな~」という気持ちになります。
子ども達は皆感受性豊かで、大人が思いつかないようなユーモアたっぷりの表現ができるのに、それをいざ「書く」となると、全く違う表現にしてしまうのです。
「おもしろくて、頭が爆発するかと思ったよ!」と話していたのに、文章に書くと「とてもおもしろかったです。」と無難にまとめる。
本を読んだ感想を聞いたら、目を輝かせながら感動したことを話してくれるのに、鉛筆を持った途端、石のように固まりあらすじを書き始める。
「うちのママね~、おこるとヤバいよ、鬼みたいだよ。この前なんてね~(ここからママのモノマネ)」と話していたので、「いい題材だから、ママのこと作文に書いたら?」と勧めて書いた作文は、「ママ、いつもおいしいご飯を作ってくれてありがとう。」のお手紙。
なんでしょう、この、急に「いい子ちゃん」になろうとする感じ。自分の素直な気持ちにベールをかけて可もなく不可もなくにする感じ。
個性を消してしまって「もったいないな~」と思ってしまうのです。
思いつく原因としては、①文章を長く書くのが面倒くさい②本音を書くのが恥ずかしい③こんなこと書いたら怒られる気がする…など、様々浮かびますが、声を大にして言いたいのは、話してくれたということは「表現力」は身についてきているという事実です。単に、その表現を紙ベースにおこすのが難しいだけなのです。
「ジェットコースターに乗ったら、ヒューンって落ちておなかの中がギューンってなって、おえーってなったよ。」
すごく分かるよ!その気持ち!!私なんてブランコでもそうなるよ!この共感が第1ステージ。
「ジェットコースターはかなり速いスピードで落ちたんだね。おなかの中がふわっと浮いた感じがして気持ち悪かったんだね。」と言い換え会話ができたら第2ステージ。
言い換えた表現を自分の「語彙力」として、引き出しにしまえたら第3ステージ。
「正しい表現」「正解」は一つでは無いのですから、徐々に、その子らしさを大切にしつつ、文章に書き落とすコツを伝えていきたいと思います。
稲川頼子