「綺麗な字書くんだね。」友人が経営する飲食店で、新しくアルバイトで入った大学生が料理の伝票を初めて書いた時、友人が大学生へ不意に声を掛けていました。緊張気味の大学生も和み、とても嬉しそうでした。
人が書く字については、私が学生時代にお世話になった教授からの言葉も印象的です。「たかが手書きの字ですが、書き手の思いや状態、性格、人となりまで伝わる時があります。」
もちろん全ての文字に神経を研ぎ澄まして、ということではありませんし、日常の中で書く文字に対して意識を向けづらいことも事実です。だからこそ、無意識に書くその文字を他人が見た時に、“読みやすい”と感じてもらえるくらいまでは、学齢期に書きこなせることが大切だと考えます。
もちろん、書く目的によって字の扱いは異なります。例えば、授業ノートをとる時に、文字や構成など綺麗にまとめることに満足し、学習するべき内容が頭に入っていないのは本末転倒です。文字を書くという行為が学習理解のためなのか、相手に伝えるためなのかを考えることも重要と思います。
ペーパーレスの時代が進む中、全てデータで管理されるような未来があったとしても、人として相手のことを思いやり、自らの手で書くという精神や行為はなくならないと考えます。書く字についての問題は、場合によって本当に時間がかかることですが、将来を見据えながら中学受験の学びの中で粘り強く子どもたちと向き合っていきます。
小吹 光