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花みち元気塾通信2023年12月「私の中の神話が崩れる時」

 中学生授業が終わる21時過ぎ、生徒を送りに駐車場にでて行くと、一人の保護者の方が1枚の紙を持って私に向かって走って来られました。
「何か困ったことがあったのかな?」と私はどきりとして立ち止まりました。
「先生、成績表見てください!」と言われ見たところ、今までより点数が取れているのでホッとしました。
が、保護者の方が言いたかったのは、国語の成績でした。
「国語が一番良い成績になっているんですよ!」と。
あーホントに。上位の成績で素晴らしい。

 そのお子さんは国語ができないと年度の初めに相談されました。選択制の国語をとる子はいなかったため、私が個別で見始めたのです。
どんなに素晴らしい指導か?
いえいえ、一緒に机を並べで学んだまでです。
漢字、文法、学校の教科書、作文、そして世間話。
その他、文章を毎日何かしら読むこととその読むスピードを意識することくらいでしょうか。わからない言葉があると私のスマホで調べてみたりもしました。
時折文法の楽しさも。
・紙を机に置く。
・紙を机に置いておく。
二つの文は状態は同じでも、その動作をしている人の気持ちによって変わっていること、日本語はそうしたことを読み取ることが面白いね、など。私が外国人に日本語を教える時、ずっと考え続けたことです。
 
 学習ができるようにと意図したのではなく、
一緒に国語を親しむことに徹しました。
生徒自身の力によってそれが理解することにつながったのだと思います。

「何とかこの問題をできるようになってもらいたい」
とそう意図した途端、
与えることになってしまい、
聞いている方はその時は理解できても、それを子ども本人が思考して完成させることは難しくなってしまう気がします。
教えるということの難しさです。
そうした時、熱心に教えることが力になるという私の中の神話は崩れていくのです。

私の中で崩れた神話は他にもあります。
「学習は静かな中でするべき」
は広い教室で他学年が同時に授業していますが、他の授業の声が聞こえてうるさいと言われたことはなく、かえって小学生の受験対策の隣で中学生授業をしていると、お互いの熱心さが増します。

「学習の合間の息抜きはゆっくりする」
は外で鬼ごっこやドッジボールで汗をかいて動いた後、学習への移行はスムーズとなり集中力も増します。

「予定した内容が終わらない場合は時間を延長してでも終わらせる。」
これ以上は思考が停止するようなら、今日はここまでと思い切ってそこで終わりにするとまた次につながります。

 時代の移行と共に教育環境も変わった今、
教える方も一つの観念に固執せず、柔軟性を持って子ども達に接する、それは試行錯誤となるでしょう。しかし、そうして模索し続けることがまた新しい何かを生むのではないかと思います。

 年末年始、皆さま健やかにお過ごしになりますことを願って今年の最後といたします。良いお年をお迎えください。藤井道子