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花みち元気塾通信 2020年2月号「優しさと厳しさの狭間」

今年も入試の季節になりました。

ある中学校での入試の時の一コマです。
1000人以上の受験生で教室の場所が分からなかったOくんは、受験生の誘導をしている先生に「入試を受ける校舎は右と左どちらのですか?」と聞きました。
その先生は「案内のプリントを見て自分で考えなさい。」と答えました。
Oくんは『え?」っと一歩後ずさりしました。
「困っている人がいたら教えてあげなさい。」といつも母親から言われているのだから、自分が他の人に聞いてたらきっと教えてくれるだろうと少し甘い考えだったのです。
母親が「こういう考えの学校なんだと思う。」と話したところ、その先生は近くに来られて、案内のプリントの見方を教えてヒントをだし、Oくんは「こっちだ」と分かって入試会場へ入りました。
母親が帰ろうとすると、先程の先生が駆け寄って来られて「余計なことを申しました。」と謝られました。
その母親は「いいえ」と答えながら、できるなら謝らないで欲しかった、その方針を貫いて欲しかったという気持ちになりました。

O君は私の子、母親は私です。
その学校とは縁はなく他の学校への入学が決まりました。
ほんの数分というわずかな光景ですが、考えさせられました。
この先生のおっしゃったように自分で考えさせることは子どもの成長にとって大切なことだと思います。
一方緊張感でいっぱいいっぱいの気持ちで不安の時、周囲の人に頼ることも間違いではないように私は思います。
このふたつを私の中でどう消化すべきかずっと考えています。

優しさは大切、厳しさも必要、それをどう線引きしていくのか?
上辺だけの優しさは長い目で見るとその子のためにならない、一方厳しさだけでは恐れる気持ちが膨らんで形だけの行動になる可能性もある。
そこで重要なのは、「信頼関係」ではないかとの思いに行き着きます。
優しい、厳しいは主観的な感覚を含んでいます。信頼関係があった上でならば、それを受け取る側は心の中のエネルギーに変えられるのではないでしょうか。

私自身、今目の前にいる子ども達にどう対応するべきか。
感情ではなく、その子の今後を思い浮かべて対応することを一番に考えたい。
そこには優しさも厳しさもない、あるのはその子が伸びることを心から願う「愛情」です。
そこを忘れないならば、両極端であった優しさと厳しさは距離がちぢまって、次第に重なり合いまでもっていくように感じるのです。

今年の入試ももう少し。
結果が伴うのが入学試験ではありあますが、
受験生全員が人生のひとつの経験として入試をプラスのものにできますように。
私は受験生全員にエールを贈りたいと思います。

藤井道子